紛争の内容
依頼者は、自動車を運転中、後方から追突される交通事故に遭い、頸椎捻挫による後遺障害(14級9号)が残ってしまいました。そこで、依頼者から、保険会社に対する交通事故による損害賠償請求をすることにつき委任を受け、保険会社との交渉をするに至りました。

交渉・調停・訴訟などの経過
保険会社に対し、赤い本の基準に従った慰謝料を請求したところ、保険会社は、訴訟外ということだけを理由に、基準の8割との回答をしてきました。そこで、弁護士から保険会社に対し、赤い本の基準に基づく慰謝料にするべき旨主張したところ、保険会社は強硬にこれに応じない態度を示しました。そこで、やむなく紛争処理センターに斡旋申立てを行いました。
紛争処理センターにおいては、保険会社は、慰謝料のみならず、交通事故被害者である依頼者が公務員であるから減収はないとの理由で、逸失利益についても争う主張をしてきました。
そこで、当方からは、公務員である依頼者の職務内容と交通事故によって負った後遺障害による将来の減収のおそれが高いことを詳細に主張し、また、最高裁判例の調査官解説等の評釈を引用し、保険会社の主張に対する反論を行いました。

本事例の結末
最終的に、本件では、当方の主張が認められ、嘱託弁護士からは赤い本の基準に従った慰謝料及び当方主張通りの逸失利益を保険会社に支払うことを内容とするあっせん案が提示され、保険会社もこれを受け入れました。

本事例に学ぶこと
通院慰謝料及び後遺障害慰謝料については、赤い本という、客観的・具体的な数値が掲載された基準があり、慰謝料の金額は当該基準に基づいて算定されるべきです。しかしながら、保険会社が、訴訟ではない交渉段階という理由で、赤い本の基準の70%から80%の金額提示をしてくることが常態化しています。弊所では、被害者が得るべき賠償が訴訟か訴訟外かで異なるというのは被害者保護の観点から適切ではなく、100%支払うよう保険会社に対して強く主張しています。それでも保険会社が支払を拒絶する場合には、紛争処理センターを利用したり、訴訟での解決を図ったりすることになります。本件でも、保険会社の提示に安易に従うのではなく、粘り強く請求していくことで、合理的な算定方法に基づく慰謝料を獲得することができました。