紛争の内容
ご依頼者様は、自転車で走行中に、側面から飛び出してきた自動車に衝突され、負傷されました。
この事故により、ご依頼者様は、頸部捻挫や腰椎捻挫等を負い、約8か月間通院されました。
また、事故により自転車が破損したため、自転車の修理費用が物損として発生していました。
当事務所は、まず、示談交渉のご依頼をいただきました。

交渉・調停・訴訟等の経過
示談交渉においては、損害額を計算し、相手保険会社に請求しました。
請求の費目は、主に、休業損害、通院慰謝料、自転車の修理費用でした。

休業損害について、当方は、額面額を実労働日数で割って日額を出し、休業日数を掛けて計算することを主張しました。
これに対し、相手保険会社は、額面額を90日で割って日額を出し、休業日数を掛けて計算することを主張しました。
この点について、当方は、当方の計算方法の正当性を主張して交渉をしましたが、相手保険会社は主張を変えませんでした。

また、過失割合について、当方は、先方の見通しが良かったことや先方がスピードを出していたこと等を指摘して90:10という割合を主張しましたが、先方はこれを受け入れず、85:15の割合を主張しました。

通院慰謝料については、当方は通院期間である250日を基に算定した額を主張しましたが、相手保険会社は50日分の通院慰謝しか認めないと主張しました。

自転車の修理費用については、当方は、全損ということでメーカーが出している時価額を主張しましたが、先方は、独自に算出した修理費用を主張しました。

このように、複数の費目で主張が対立し、示談交渉では折り合いが付かなかったため、交通事故紛争処理センターにあっせん申立を行いました。
交通事故紛争処理センターのあっせんでは、紛争処理センターの委員から、相手保険会社寄りののあっせん案が提示されたため、折り合いが付かず、交通事故紛争処理センターの審査会の手続きに進みました。

本事例の結末
審査会においては、休業損害の算定方法について、裁判例や裁判官の講演録等の証拠を提出して、当方がとる算定方法の正当性を主張しました。
また、過失割合について、事故現場である道路の状況を具体的に述べ、先方の見通しが良いことや先方がスピードを出していたであろうことを主張し、基本の過失割合から当方に有利に修正されるべきことを主張しました。
その結果、過失割合・休業損害・自転車の修理費用については当方の主張を満額認め、慰謝料については当方の主張の9割以上を認める内容で合意することができました。

本事例に学ぶこと
示談交渉で解決ができない場合、交通事故紛争処理センターへあっせん申立を行うことは珍しくありません。
ただ、交通事故紛争処理センターでのあっせんにおいても、納得のできる解決が叶わないこともあります。
そのような場合には、交通事故紛争処理センターの審査会を利用することも検討するべきです。
本件のように、客観的な証拠を提出し、事故状況等を詳細に説明できれば、あっせんよりも有利な解決を図ることができます。
特に、休業損害については、保険会社は、収入の額面額を90日で割って休業日数を掛けるという計算方法を主張しますが、今回のように、額面額を実労働日数で割って日額を出して休業日数を掛けるという計算方法には、裁判例や裁判官の講演録などの根拠がありますので、この計算方法をとるべきです。

弁護士 時田 剛志
弁護士 権田 健一郎