紛争の内容
センターラインのない狭い一本道で、対向車同士がすれ違い様に、接触する事故が発生しました。
相談者は、一度停車し、様子を伺っていたところ、対向車の車はぐいぐいと進み、挙句に、自動車をこすりつけたという事故でした。
相談にお越しになった段階では、事故から数か月が経過しており、相変わらず、相手方と相手保険会社とは【50:50】と主張し、譲らない状況が続いておりました。
しかし、相談者は完全に停車しておりました。
この際、お互いの車両にはドライブレコーダーが設置されておりませんでしたので、相手は「こちらも動いていた」と主張してくるリスクもあり、水掛け論に陥るおそれもありました。
当職は、裁判になる可能性があることも伝え、交渉を進めることにしました。
交渉・調停・訴訟等の経過
交渉においては、まずは、事故態様に関する認識を固める必要がありました。
そうしないと、裁判などになったときに、相手の言い分が自分に有利なもの、例えば、お互いに動いていたなどと主張しかねないからです。
そこで、最初から攻め入るのではなく、質問のような形式で、こちらの認識する事実を伝え、相手保険会社から相手方に一つ一つ確認して回答してもらうことにしました。
すると、依頼者の車両が停車していたことは、言質をとることができました。
その上で、以下のような主張を行いました。
双方の主張の内で共通するのは、当職依頼者の車両が停車した状況であったこと、貴社ご契約者が「●車両が動かなかった」ことを認識しつつ、「前進止む無し」「すれ違いが出来ると思った」ため、前方の安全を確認しないまま発進し、その結果、本件事故が生じたことは、動かし難い事実となります。
貴社ご契約者は、当職依頼者との間で接触をどのように回避するかを話し合う間もなく独断で前進を開始し、後退するなどして本件事故の発生を未然に防止することもなく、当職依頼者の車両が完全に停止している状況下で、本件事故を生ぜしめているものと評価できます。
従って、本件事故の原因は、専ら、貴社ご契約者の前方不注意、前方の目測見誤り、他の車両に接触しないよう側方間隔を適切にとるべき注意義務を行った過失によって生じた事故となる一方、道路左側に寄せて停止させていた当職依頼者の過失を認めることはできません。
現に、本件と同様、“停止していた被告車両の側方を通過しようとした原告車両(運転者はA)が、その右ドアミラーを被告車両の右ドアミラーに接触させた事故”において、「本件事故は、もっぱらAが、他の車両に接触しないよう、側方間隔を適切にとるべき注意義務を怠った過失によって生じた事故といえる一方、被告車両を左端に寄せて停止させていた被告に過失を認めることはできないというべきである。」と判示しております(横浜地裁令和3年11月18日)。
よって、本件事故の過失割合は、貴社ご契約者100:当職依頼者0が相当です。
本事例の結末
当職の受任前の状況から、相手の意思は固く、譲歩は望めないので裁判もやむなしと考えておりましたが、上記のような交渉が功を奏し、無事に、【100:0】を受け入れるとの回答がありました。
相手保険会社が相手方を説得したものと考えられ、無用に裁判をするということを避けることができました。
ご依頼者からは、「今回、諦めようと思っていましたが、ご相談させていただき、本当に良かったと思っています。このような小さな案件に、親切丁寧かつ迅速にご対応していただいた事、本当に嬉しく思っています。ありがとうございました。」と感謝の意を表明され、ご依頼をお受けすることができて本当に良かったと思いました。
本事例に学ぶこと
いわゆる損害額が小さい事件(物損事故など)は、泣き寝入りしている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
「他の法律事務所において、このような事件を断られた」というお客様も一人や二人ではありません。
しかし、弊所では、お怪我の事故、後遺障害のある事故と同様に、物損事故についても厭うことなくお受けすることが可能です。
弁護士特約が利用できる方は、まずは「駄目元で」というお考えでも構いません。一度、ご相談いただけたらと存じます。
弁護士 時田 剛志