紛争の内容
パートをしながら主婦業(同居は「夫」のみ)を営む兼業主婦の方が、運転中に追突事故に遭いました。
首(頸部)に違和感を感じ、すぐに治療を開始しました。
傷病名は「頚椎捻挫」などでした。
通院は整形外科におけるリハビリを実施しましたが、半年を目途に「症状固定」となり、後遺障害申請を行うというところから弊所の弁護士が対応することになりました。
交渉・調停・訴訟等の経過
弊所は、自賠責保険に対し被害者請求(自賠16条請求ともいいます)を行うため、後遺障害診断書などの準備を依頼し、必要書類を整えました。
なお、たまに後遺障害申請はどのくらい時間がかかるか?というご質問を受けます。
まず、被害者請求の際には、相手の保険会社が一括対応していた際の診断書・レセプトを全て提出する必要があります。それらの資料は、病院が保険会社に発行し、保険会社が弁護士に提供するという流れを辿ります。
たとえば、当月分が翌月に病院から保険会社に送付されますので、6月5日に症状固定したら、弁護士の手元に届くのは7月中旬以降といった形でタイムラグがあります。
そのため、症状固定してから申立までに1か月以上かかることがあります。
また、申立をした後、自賠責の損害保険料率算出機構において後遺障害の認定をするのですが、その間に「画像所見」を追完してほしいという依頼がほぼ必ずあります。そのため、患者様には病院からレントゲン・CT・MRIなどの既に撮影されている資料の開示を受け、提供する、というひと手間があります(費用は、認定如何にかかわらず、自賠責が賄ってくれます。)。
その結果、審理期間は、2ヶ月前後かかることが多いです。
本件では、首の痛みが残置してしまったことに対し、14級9号(医学的に説明可能な痛みやしびれなどが持続している)に該当すると評価してもらうことができました。
<理由部分の抜粋>
頚椎捻挫後の頚椎の痛み等については、提出の頚部画像上、経年性の変性所見は認められるものの、本件事故による骨折や脱臼等の器質的損傷は認め難く、他覚的に神経系統の障害が証明されるものと捉えることは困難ですが、その他治療状況や症状推移等も勘案すれば、将来においても回復が困難と見込まれる障害と捉えられることから、「局部に神経症状を残すもの」として別表第二第14級9号に該当するものと判断します。」
今回のもう一つのポイントは、主婦休業損害でした。
主婦業の収入=女性の平均賃金>パート収入
→主婦業として、1日1万574円と計算し、休業損害を上乗せして請求しました。
本事例の結末
その結果、自賠責からは75万円の賠償を受けることができました。
その上、相手の保険会社との交渉により、治療費約65万円、後遺障害診断書作成料や交通費、休業損害約60万円、慰謝料約80万円、逸失利益約90万円、後遺障害慰謝料110万円を支払っていただき、ご依頼者の手元には、約340万円が残りました。
本事例に学ぶこと
不運にも交通事故に遭った場合には、損害賠償がせめてもの救いです。
特に主婦の方、パート・アルバイトをしながら夫を支え、または子育てをしている方は、損害額を侮ってはいけません。
相手の保険会社は、わざわざ被害者にとって有利な、主婦休業損害などを自主的に計上してくれませんし、教えてもくれません。
そのため、弁護士に相談もせず、相手の保険会社の提示を「こんなものか。」として示談をしてしまうと、適正な賠償を受けられないという現実にしっかりと目を向けていただきたいです。
私どもは、適正な損害賠償を実現するために最善を尽くします。
弁護士 時田 剛志