紛争の内容
ご相談者は、ガソリンスタンド内で給油を終え、同敷地内にあるタイヤのエアーチェックのエリアに移動し、チェックを終え、ガソリンスタンドから出ようとした矢先でした。
位置関係は、エアーチェックエリアが店舗壁沿いに位置しており、壁側に車の左側を寄せる形で停車していたところ、前方には障害物があったため、一度、バック後退し、次いで出口のある右方向に向かおうと考えておりました。
ご相談者の車両がバックを開始し、車内では、左から後方を振り向いて、リアガラスから後方に目を向けてゆっくりと後退しておりました。
すると、車両の右側に衝撃を受けました。
右方を見ると、車のリアバンパ―付近がご依頼者の車両右ドアに接触しているではありませんか!
このような交通事故に遭い、ご相談者は自分の過失は少ないはずだとお考えでしたが、相手方保険会社からは、双方が動いている状況であったことや別冊判例タイムズの駐車場内における事故の図(もっとも、本件の事故と同様ではない)を参考に、50:50の過失などを主張されておりました。
弊所に相談する前に、別の弁護士に相談したところ、なんと鼻で笑われ、50:50でも仕方がない、と言われたそうです。
しかし、弊所では、同じ交通事故はなく、個別の事情を踏まえて過失を争う余地があると判断し、ご相談者のお力になれるよう依頼をお受けしました。
交渉・調停・訴訟等の経過
客観的な証拠としては、相手車両のドライブレコーダーの映像がありました。
そのため、まずはフロントビューのみならず、リアビューカメラ映像の開示を受けました。
内容を検討すると、確かにご相談者の車両がゆっくりと後退している様子が分かりました。
同時に、相手方運転者からは、相当程度前から、後方を見ていれば、ご相談者の車が動いている様子をとらえることができ、それなのに後退を続けていることから、明らかな後方不注意であると考えました。
しかし、交渉では平行線(相手方も相手保険会社も譲りません)でしたので、簡易裁判所に訴訟を提起し、裁判官の審理を行うことになりました。
裁判においては、ご相談者は、「被告が進行方向を注視さえしていれば、およそ本件事故は起こり得なかったことから、被告は後退している間、後方を一切見ていなかったことが推認できる(そうでなければ、●秒もの間に原告車両が移動していることに気が付かないはずはなく、気付いたとすれば進行を続けるはずはないから、である)。
一方、原告にすれば、原告車両と給油スペースの間の僅かな区画に自動車が進入してくることを予見するのは不可能である。通常、原告車両の後方にいた給油スペースの自動車も、給油が終わり次第、前進して出口に向かうためである。原告は、原告車両の後方にある給油スペースに他の自動車が存在したため、後方を注視して後退しているから注意義務を尽くしている。」などと主張し、過失が異なることを指摘しました。
本事例の結末
結果としては、何度か主張・反論をやりとりを経て、裁判官から和解案が示されました。
和解案としては、ご相談者の主張は最もな点もあるとしつつ、過去の同種事案や状況証拠からして、被告80:原告20が相当であるとし、その内容で和解を進めるものでした。
ご相談者は、これを甘んじて受け入れ、和解が成立し、物損の賠償を得られることになりました。
本事例に学ぶこと
過失の争いは、見通しが立てにくいことがあります。
一方、過失割合をたとえどんなに主張しても、別冊判例タイムズに従って、争いようがない場合もあります。
特に「物損」のみの場合、損害額が大きくないこともあり、よその法律事務所から断られたという方が多くいらっしゃいます。
しかしながら、グリーンリーフ法律事務所では、「過失は難しいから」(もちろん、事案によります。我々は、無理なものであれば無理とご相談時からハッキリとお伝えいたします。)、「損害が小さいから」などという理由から、ご依頼を受けるかどうかを判断せず、お客様のご希望を踏まえつつ、最善と考えるアドバイスをするように心がけております。
弁護士 時田 剛志