バイクでの事故は、車と異なり運転者の体が外に露出していることなどから車に比べて重大な事故が多く、死亡事故にもつながりやすいです。

事故、特に死亡事故があった際、その事故結果の重大性から、何もできないという気持ちになることは当然です。ですが、重大な事故に遭遇してしまったときこそ適切な動きをする必要があります。

ここでは、バイクの死亡事故があった際にどうすればよいかについて解説いたします。

死亡事故があったときの流れ

バイクで死亡事故が起きてしまった場合、その後の流れは大まかに、

①事故の発生

②通夜や葬儀のとりおこない

③損害額や慰謝料について保険会社との示談交渉

④交渉がまとまらなければ民事裁判などでの解決

となります。

通夜や葬儀のとりおこない

通夜や葬儀は、交通事故の慰謝料請求等と関係ないとも思われますが、必ずしもそうではありません。

通夜や葬儀では、加害者側から香典などの申し出があることが考えられます。

もちろん、こうした申し出については、精神的な負担がかかることから、断ることもできます。しかし、香典を受け取った場合、後の示談交渉などにおいて「損害賠償の前払いである」と主張されることもありえます。

香典を受け取ることになった場合には、損害賠償とは異なる支払いであることを明確に確認しておく必要があります。

保険会社との示談交渉

事故が起き、葬儀などの一通りの手続きが終わったあとには、加害者側の保険会社と示談交渉をすることとなります。

交通事故が起こった際、当事者同士が互いに自分の任意保険会社に連絡をして事故対応を依頼するのが通常です。

この際、加害者側の保険会社から連絡があることが考えられますが、加害者側が任意保険に加入していない場合には、加害者側の任意保険会社から連絡が来ることはありません。

そのため、こちらの任意保険会社には、加害者が任意保険会社に加入しているかどうかについて、確認を行っておくことが必要です。

なお、強制加入保険である自賠責保険は、被害者や加害者から申請された損害賠償金についての審査や支払いを行っていますが、被害者対応の代行は行っていません。

そのため、自賠責保険から連絡が来ることはありませんので、注意が必要です。

民事裁判等での解決

保険会社との間で、損害額や慰謝料がどのくらいの金額となるのかということについて、示談交渉が行われます。

ですが、示談交渉はあくまで当事者が任意で金額に折り合いをつけるものであり、強制的にこの金額で終了せよ、という結論が出るものではありません。

加害者側保険会社も被害者のいう金額をそのままで示談するわけではありません。

各保険会社ごとに、今回はこのような根拠からこれぐらいの金額しかだせないという提示が行われます。

金額に折り合いがつかない場合には、示談での解決を図ることができないことになります。

その場合、①ADR機関を用いた解決、②裁判所での調停を用いた解決、③裁判所での訴訟を用いた解決が考えられます。

①ADR機関を用いた解決

ADR機関とは、裁判所以外で第三者の弁護士が仲裁などをする場所のことをいいます。

主に用いられるのが「交通事故紛争処理センター」です。

ADR機関を用いることで、裁判所を用いた解決よりも短い期間で解決を図ることができる傾向があります。

裁判所を用いないとはいえ、専門的知見を有する弁護士が中立的な立場で仲裁を行うため、公平な解決が期待できます。

②裁判所での調停を用いた解決

調停では、裁判官と調停委員が両当事者の話をきき、被害者と加害者が納得できるような妥協点を話し合います。

調停も、あくまで裁判所を用いた話し合いですから、強制的に結論を出すということはできません。

ですが、裁判所が間に入って話し合いを行うこととなりますから、当事者間同士での任意の話し合いを比べて、話し合いがまとまることを期待できます。

また、裁判に比較すると手続が簡易で、費用も抑えられるというメリットがあります。

③裁判所での訴訟を用いた解決

上記①②とは異なる性格のものとして訴訟があります。

訴訟とは、裁判のことであり、当事者が主張立証を尽くして判決を得ることを目的とする制度です。

訴訟では、裁判官による判決が出されますから、その判決には基本的に従う必要があります。

そういう意味で、一番強制力を持っているのが訴訟という手続きです。

保険会社との示談交渉でするべきこと

示談交渉で話し合いが行われる費目

保険会社との示談交渉では、損害についての請求をすることとなりますが、その項目は主に①死亡慰謝料②死亡逸失利益③葬儀費用となります。

なお、事故により入通院を行っていたものの、事故の怪我等が原因で死亡してしまった場合には、治療費等を請求することもできます。

保険会社との交渉では、主にこれらの費目についての金額を交渉することとなります。

これらの費目の金額は、いくらにしなくてはならないという法律があるわけではなく、交渉で具体的な金額を決します。

この際、加害者側の保険会社からは、任意保険基準の金額が提示されることとなるのが通常です。

しかし、こうした費目には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)があります。自賠責基準がもっとも低額で、弁護士基準(裁判基準)がもっとも高額となります。

この意味で、示談交渉をする場合、弁護士を介入させて、弁護士基準で話し合いを行うことが適切な解決には重要です。

①死亡慰謝料

自賠責基準 400万円~

死亡慰謝料について、自賠責基準では「被害者本人の死亡慰謝料 400万円」と定めております。

この金額に、遺族への慰謝料を加算した金額が自賠責基準における死亡慰謝料となります。

遺族への慰謝料は、人数や扶養の有無によって変わります。具体的には下記の通りです。

慰謝料の請求権者が1名550万円
慰謝料の請求権者が2名650万円
慰謝料の請求権者が3名以上750万円
被害者に被扶養者がいるときこれらに加えて200万円

弁護士基準(裁判基準) 2000万円~

自賠責基準では、400万円からスタートして請求権者が何人いるかで金額の決定を行っていましたが、弁護士基準の場合、被害者の家族内での地位や属性などの様々な事情を考慮して、より実質的な「損害」としての金額を決めています。

具体的には以下の表のようになっています。

一家の支柱である場合2800万円
母親、配偶者の場合2500万円
その他2000万円~2500万円

上記の表のようにおおむねの金額が定められているものの、ここから様々な事情を考慮して金額を増減させます。これは実質的な損害を算定するためであり、この金額は本来裁判を起こした場合に得られる金額です。

ですが、自賠責基準よりも弁護士基準のほうが金額の基準がはるかに高額であることが分かります。

②死亡逸失利益

死亡逸失利益とは、被害者の方が事故にあわずに生きていたならば得られたであろう利益のことを言います。

これは、やや複雑な計算を用いて計算が行われます。

死亡逸失利益については、詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

③葬儀費用

死亡事故が起きてしまった場合、通夜や葬儀、墓石の用意などといったように葬儀関係の費用が必要となります。

自賠責基準

葬儀費用として一律100万円が支給されます。

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準の場合、葬儀費用としては原則150万円とし、これを下回る場合には、実際に支出した額が支払われることとなります。

もっとも、遠方の地で葬儀を行うべき必要があったという場合や、特別に費用がかかったことについて特段の事情がある場合には、150万円以上の支払いが認められることとなります。

なお、香典返しについては損害として認められていないため、支払いを求めることはできません。

保険会社との示談がまとまらなかったときにするべきことは

上記のような示談交渉がまとまらなかった場合、ADR機関や訴訟提起を検討することとなります。

これらは、主張をまとめて、第三者に適切に伝える必要があるため、より専門的な知識や経験が求められます。

特に訴訟において、適切な主張や立証を行うことができないと、ご自身の納得できる結果を得ることができないという結果になりかねません。

そのため、弁護士を介入させて適切な結果を獲得することが重要です。

まとめ

ここまで、バイクで死亡事故が発生してしまったときの流れや、やるべきことについて解説しました。

死亡事故が起きてしまった場合、のこされたご家族のお気持ちは察するにあまりあります。

大変お辛いことと存じますが、重大な事故が起こったときこそ、適切な対応を行うことが必要です。

そうした適切な対応には、専門的知識が必要となるうえに、何より精神的な負担が大きくのしかかります。

ご自身ですべての手続きを行うことは困難ですから、ぜひ弁護士に相談していただけますと幸いです。

弁護士が入ることで、適切な金額で解決を図ることが期待できますし、ご自身の精神的な負担を減らすことができます。

死亡事故に限らず、交通事故でお悩みの方は、ぜひ一度弁護士に相談していただけますと幸いです。


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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭
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