紛争の内容
依頼者の方は、子どもが同乗する自動車の運転中、後続車から衝突され、自動車は自走不能な状態にまで損壊し、身体面では首の痛みや頭痛により家事ができないような事故に遭いました。依頼者は、弁護士費用特約を利用して、事故間もなく弊所に相談にいらっしゃいました。そこで、治療開始直後から、私たち弁護士が保険会社との交渉を進めていくことになりました。
交渉・調停・訴訟などの経過
まず、物損の点について、保険会社は、断固として修理費用相当分しか支払わない姿勢でした。しかし、自動車は自走不能な程度に損壊が激しく、依頼者は自動車の修理ではなく、新しく自動車を買い直す必要に迫られていました。そこで、私たちは、本件自動車の登録年数・走行距離などに類似した自動車についての評価損を認めた裁判例を探し、この裁判例を基に保険会社に評価損を支払うよう強く主張していきました。
その結果、裁判例ほどの高額の評価損にまでは至らないものの、訴訟外にもかからわず、依頼者が満足いく評価損相当金額を獲得することができました。
次に、お子様の人損事故について、幸いにも怪我が軽く済み、治療は早く終わりました。すると、保険会社は、著しく低廉な「看護料」名目の支払提示及び低廉な通院慰謝料を提示してきました。そこで、きちんと赤い本基準による「通院付添費」を支払うこと、赤い本基準という客観的な基準に従った、客観的に相当な金額を支払うよう強く主張していきました。
その結果、通院付添費については赤い本基準「満額」、通院慰謝料については実に赤い本基準の約98%という高額の金額について、訴訟外にもかかわらず、獲得することができました。
その後、依頼者自身の治療が問題となりました。保険会社としては、予想通りではあるものの、何度も何度も治療打切を示唆してきました。しかし、私たちは、通院治療の必要性を強く主張し、断固として治療打切には応じない態度を示しました。それにもかかわらず、保険会社の一括対応を迫り、自費治療後に保険会社に請求するように言ってきましたが、私たちは頑としてこれに応じることはしませんでした。その結果、依頼者は、痛みがなくなるまで、安心して最後まで通院することができました。
最後に通院治療終了後、休業損害・通院慰謝料が問題となりました。
依頼者は専業主婦であったため、家事従事者としての休業損害を求めましたが、保険会社は、自賠責基準の低廉な金額を基準として、実際に通院した日数分だけを支払う旨提示をしてきました。また、通院慰謝料についても、赤い本基準を大幅に下回る金額を提示してきました。そこで、休業損害の計算については、訴訟になった場合の裁判所が判決時に使う逓減法による計算値を主張し、通院慰謝料については、訴外であるとの説得力ない理由による減額は認めないと強く主張していきました。
その結果、休業損害につき逓減法による請求「満額」の金額、通院慰謝料については依頼者が納得する金額を獲得することができました。
本事例の結末
依頼者が早い段階でご依頼いただいたことで、治療を不本意に早く打ち切られることもなく、損害賠償内容について、満足いく金額を獲得することができました。
本事例に学ぶこと
弁護士に依頼する前に、むやみに保険会社の交渉に応じては、大きな不利益となります。早い段階で弁護士に依頼し、安心して治療を受けられるよう、また、弁護士に依頼して交渉のストレスをなくすようにすることが有益です。困ったときは、ではなく、困る前に弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士時田剛志・弁護士平栗丈嗣